印章鑑定

 

印章の検査方法

 印章鑑定では必要に応じて,赤外線対応デジタル一眼レフカメラCanon60DaデジタルカメラにCanonMP-E65mmF2.8 1-5×マクロフォトレンズ,EF50mmF2.5コンパクトマクロを用いて,上記の条件で各印影画線の拡大を撮影する(印影の変形を防ぐため鑑定ではスキャナーは用いない)。また,撮影では通常の印影撮影のほか,科学捜査用特殊ライト等(ALS)による紫外線検査,赤外線検査,近赤外蛍光検査等を併用し,押印圧痕の検出や非破壊によるインクの成分検査等も行う。  色材粒子の状態をさらに詳細に観察するため,キーエンス社製 超解像デジタルマイクロスコープ VHX500F,(レンズVH-Z100R,観察倍率100~1000倍)を使って,高倍率の顕微鏡検査を行う。
 これによって,印字部分の画線を形成するインクや朱肉の付着状態等の詳細な検査が行える。検査では,デジタルカメラによって撮影されたすべての印影や印面の画像を同一条件で1つの画像に重ね合わせ,印影ごとに色を変換し重ね合わせる方法で比較検査を行う。これにより,印影の直径や形状,印影文字の書体や字体,大きさや配字,字画形態や字画構成,また印影画線の太さや形状及び相互位置,宿肉や着肉巣の有無とその状態,さらに先天的あるいは後天的な印面特徴の有無とその状態等について比較する。また,同倍率で撮影した印影画像をパーソナルコンピュータに読み込み,フォトレタッチソフトAdobe Photoshop CS6を用いて同一画面上にすべての印影の重ね合わせ,相互間で比較検査を行う。

1.鑑定資料⇔【鑑定資料の種類や外観を記録】

 契約書・請求書・受領証,遺言書,印鑑登録証明書,公的文書(証明書/許可状),届出書(養子縁組/離婚届)印章,用紙の種類や大きさ,文書の作成年月日など。

2.印影の外観所見⇔【検体印影の外観と形態,印面構成の所見】

 印の外形(丸印,小判印,角印,二重輪郭印)
 印影の大きさ(丸印の直径/小判印の長径/角印の一辺の長さ/)
 配字(文字数/環状文字),配字方向(縦横/文字相互の大きさ)
 文字相互間や文字と輪郭線の接触の有無,書体(通常書体/印章書体)
 印材(植物・鉱物・動物の硬組織/合成樹脂)
 朱肉の付着量(着肉量),割印,消印,文字との重複

3. 拡大検査 ⇔ 【印影の再現性の検査】

 着肉量の多少(反射光・透過光),押印ズレ,傾斜押印,押印圧痕,宿肉,着肉巣,マージナルゾーン,画線の欠損
(線端確認),画線の肥大,押印変動,色材の蛍光の有無,色材の浸透・拡散

4. 顕微鏡検査⇔【再現状態の詳細検査】

 朱肉の付着状態(朱肉の盛り上がり),朱肉の過不足,二重押印,押印圧痕,欠損部の線端状態(マージナルゾーンの有無),印面の固有特徴,転写摩擦痕,印影と文字画線の上下関係,カラーコピーの識別

5. 検体印影の拡大検査⇔【同一条件での検体印影の取り込み】

 朱肉の付着状態(朱肉の盛り上がり),朱肉の過不足,二重押印,押印圧痕,欠損部の線端状態(マージナルゾーンの有無),印面の固有特徴,転写摩擦痕,印影と文字画線の上下関係,カラーコピーの識別

6. 印影の比較検査⇔【必要に応じて複数の検査を利用】

コンピュータによる重ね合わせ(スーパーインポーズ法)検査

  • 検体印影と対照印影の重ね合わせによる比較
  • 検体印影と平面幾何学図形の重ね合わせによる法検査
  • 検体印影と対照印影の輪郭線の重ね合わせによる検査
  • レイヤーの差の絶対値を利用したスーパーインポーズ
  • 照合率,残渣率の比較

7. 総合判定⇔【検査結果を総合的に検討】

  • 条件に対する考慮(印影の再現性の良不)既製印顆使用の不可)
  • 検体印影の検査結果の全てを総合した判断,印顆の同一性に関する検討
  • 比較検査における類似性や相違性を排除できる理由(結論に至る経過)

8.検査結果⇔【認める・推定する・類似性が高い・類似性が示唆・不明】